

「男」とは自明視されるほど確固たる存在か。男らしさ、身体、男性運動、ヘゲモニー、ミサンドリーの視点から「男」に徹底的に向き合い、男性たちが性差別構造を解消し、自分の性/生を豊かにするための思考・実践を探究する。
[目次]
第1章 男らしさ
用語確認/男であることを阻まれてきたトランス男性/区別する/二つの課題/父親と母親の認識差/男らしさと人間らしさ/男性特有の「男らしさ」/第1章のまとめ
第2章 身体
「性別はオスとメスだけ」/性別の「一貫性」への反論/性別の「不変性」への反論/ペニスとファルス崇拝/ヒゲ闘争/徴兵制/第2章のまとめ
第3章 男性運動①――メンズリブと男性学
日本の男性運動のはじまり/1990年代メンズリブ/メンズリブは衰退したのか/メンズリブにおけるヘテロセクシズム/受容止まりのインターセクショナリティ/クィア・パラダイムと「男」/女性差別への無関心/メンズリブのまとめ/男性学とは何か――三つのW/男性性のポリティクス/私の経験談/男性学のまとめ
第4章 男性運動②――旧来の「マスキュリズム」
アメリカの男性運動の8視点/対女性認識/二つの着眼点をもつ/「男性差別解消」をめざすマスキュリスト/「男性差別」で語られるものの現状/男性の被抑圧性をどう語るか/多様な父親運動/右派のジェンダー・バックラッシュ/右派特有のロジック/自民党政治を「男性運動」として読む/合流する男性の権利運動/男性運動の先へ/第4章のまとめ
第5章 ヘゲモニー
気づかずにいられること/男性特権/ヘゲモニックな男性性/共犯的な男性性/男性のヘゲモニー/ヘゲモニーなき男性/複合特権/他者の従属で立場が決まる/第5章のまとめ
第6章 ミサンドリー
ミソジニーとミサンドリー/性別移行とミサンドリーの所在/男性の自己嫌悪/同性愛にみるミサンドリー/セクシュアリティからの逃避/「弱者男性論」というフィールド/「弱者男性論」を求める男性たち/ミサンドリーに対抗する処方箋/家父長制を内側から蝕む声として/ミサンドリーをもたないポジティブな男性像/第6章のまとめ
【推薦】
江原由美子さん(東京都立大学名誉教授)
トランス男性の著者が、「男とは何か」に徹底的に向き合うラディカル・マスキュリズムという新しい視角で、巷にあふれる男性論から男性運動や男性学まで、明解に斬る刺激的な一冊である。
杉田俊介さん(批評家)
「男」たちは「男とは何か?」という問いに十分に向き合ってきただろうか? 「男」たちは「男」としての生を本当に楽しめているだろうか? 本書と共に、男性運動の歴史を学びつつ、「男」の未来を一緒に考えていこう。
[著]周司 あきら(しゅうじ あきら)
作家、主夫。著書に『トランス男性による トランスジェンダー男性学』(大月書店、2021年)、『男性学入門――そもそも男って何だっけ?』(光文社新書、2025年)、共著に『埋没した世界――トランスジェンダーふたりの往復書簡』(明石書店、2023年)、『トランスジェンダー入門』(集英社新書、2023年)、『トランスジェンダーQ&A――素朴な疑問が浮かんだら』(青弓社、2024年)などがある。『エトセトラ』10号(エトセトラブックス、2023年)では男性学特集の編集を担当。