

ミクロの世界の生き物たちは泳ぎの達人だ。SFのように私たちが小さくなってミクロの世界でバタ足をしても、実はまったく進まない。ミクロの探検隊員になって、微生物からマイクロロボットまで流体力学を駆使した「泳ぎ」の秘密を探る。数学・物理・生物・化学がダイナミックに融合する最先端科学の現場へようこそ!
目次
まえがき
1時限目 ミクロの水に飛び込んでみる――常識が変わる世界へようこそ
顕微鏡の中の世界
微生物の世界
体の中の世界
ミクロの世界の不思議
2時限目 水の粘性を体験してみる――ハチミツの中の世界
水や空気の粘性?
流れvs粘り
ハチミツの中の世界
3時限目 見えない世界に触れてみる――流れと粘りを解き明かす方程式
現実世界と数学世界
運動方程式
流れを数式で表わすには
流れを予言する方程式
《休み時間》流体方程式のかんどころ
4時限目 バタ足から始めてみる――ミクロのホタテ貝は泳げない
ストークスの法則を感じよ!
「流れ」と「形」の密な関係
時間が戻る流れ
帆立貝定理 ――ミクロ遊泳の基本定理
コラム◎帆立貝定理の簡単な証明
ループを使って泳げ
自然界の巧みな泳ぎ
《休み時間》研究裏話1
5時限目 生き物に学んでみる――精子がつくった新たな1ページ
生物運動の方程式
理論が予言した分子モーター
流れがあるなら逆らいたい
《休み時間》研究裏話2
6時限目 ロボットを泳がせてみる――英雄の予言
ファインマンのマイクロマシン
ミクロのスクリュー
生物模倣ロボット
二つの顔をもつ神の粒子
7時限目 みんなで泳いでみる――小さな世界の大いなる知恵
アクティブマター
みんなで泳げば怖くない?
ミクロ遊泳が地球を救う?
放 課 後 ミクロ遊泳から原生知能を探る
あとがき
参考文献・情報
著者
石本健太(いしもと・けんた)
京都大学大学院理学研究科教授.博士(理学).1987年奈良県生まれ.京都大学理学部卒,同大学院理学研究科博士後期課程修了.京都大学白眉センター特定助教,東京大学大学院数理科学研究科特任助教,京都大学数理解析研究所准教授を経て現職.専門は応用数学,流体力学,数理生物学.著書に『微生物流体力学――生き物の動き・形・流れを探る』(サイエンス社,2022年),訳書にエリック・ラウガ著『流体力学超入門』(岩波科学ライブラリー,2023年).