

「最初に『何かすごい』と思い、それがずーーーーーっと止まらず、一冊全部がそうだった。」
――斎藤真理子(翻訳家)
『優しい地獄』が読書界に衝撃を与えた、ルーマニア出身の文化人類学者イリナ・グリゴレ、最新作。
娘たちと過ごす青森の日々。ふとよみがえる故郷ルーマニアの記憶。そして、語られてこなかった女たちの物語――。
「彼女の人生をスクリーンのようなものでイメージとして見せられたら、彼女の語らなかったことが見えて、あの夜ニュースを見た人たちも彼女を理解できたかもしれない」(本書より)
虚実を超えて、新たな地平を切り開く渾身のエッセイ。
今までに書かれたどんな日本語よりも、鮮烈なことばをあなたに。
目次
コロナくんと星の埃
鬼は来ない日も来る
蛍が光る場所
逃げたパン
天王星でルビーの雨が降っている
団地ラボラトリー
ダンゴムシに似ている
ナメクジの世界
野良犬
ドリームタイム
綿飴、いちご飴とお化け屋敷
きのこ雲
狼が死んでいた
死んでも生きる
葡萄の味
結婚式と葬式の間
ゴダールが死んだ年に
みえないもの
何も意味しないとき、静かに朝を待つ
何も意味しないとき、燃えている森の中を裸足で歩いて、静かに朝を待つ
卵を食べる女
蜘蛛を頭に乗せる日
初恋と結婚した女
Ghosted
果実の身代わり
あとがき
著者
イリナ・グリゴレ〈Irina Grigore〉
文化人類学者。1984年ルーマニア生まれ。2006年に日本に留学し、一時帰国後、2009年に国費留学生として来日。弘前大学大学院修士課程修了後、2013年に東京大学大学院博士課程入学。青森県内を主なフィールドに、獅子舞や女性の信仰を研究する。2023年にはバヌアツで女性を対象としたフィールドワークを始めている。キーワードはイメージ、自然観、死生観、有用植物、霊魂。著書に『優しい地獄』(亜紀書房、2022年)。