

熾烈なバックラッシュの背景に何があるのか。台韓における性的マイノリティの運動史を辿り、その達成をフェミニズムとの交差とともに歴史化。冷戦という観点から両国の比較を超えた視野を提示する、クィア・スタディーズの到達点。
目次
プロローグ
序論
1 はじめに
2 先行研究の検討
3 問い
4 対象と方法
5 構成
6 用語と翻訳
第一部 〈包摂〉をめぐる闘争
第一部 はじめに
第1章 台湾Ⅰ――「ゲイフレンドリーな軍隊」の誕生
1 冷戦と徴兵制
2 軍事主義とジェンダー政治
3 メンバーシップ
4 「合理的配慮」としてのトランスジェンダーの排除?
5 「ゲイフレンドリーな軍隊」の誕生
6 小括
第2章 韓国Ⅰ――「従軍する権利」を求めて
1 国家の軍事化と徴兵制の定着
2 軍事化された男性性とホモソーシャルな社会
3 メンバーシップ
4 「真のトランスジェンダー」とはだれか?
5 「従軍する権利」を求めて
6 小括
第一部 まとめ
第二部 〈解放〉をめぐる闘争
第二部 はじめに
第3章 台湾Ⅱ――「革命いまだ成らず、同志たちよ努力せよ!」
1 はじめに
2 他者の言語、当事者の言語
3 同志運動の興隆と公共空間をめぐる闘争
4 「LGBTフレンドリーな台北」の形成
5 小括
第4章 韓国Ⅱ――「いつか訪れる解放」のために
1 はじめに
2 「変態性欲」から「人権」へ
3 ソウル市児童生徒人権条例――性的マイノリティ運動と生徒人権運動の共闘
4 ソウルクィアパレードの挑戦――「自由で安全なソウル」を求めて
5 小括
第二部 まとめ
第三部 〈権利〉をめぐる闘争
第三部 はじめに
第5章 台湾Ⅲ――「毀家・廃婚」から「婚姻平等」へ
1 はじめに
2 「ジェンダー平等」と婚姻平等
2-1 同性婚法制化をめぐる歴史
2-2 ジェンダー主流化のパラダイム・シフト
2-3 性的マイノリティ運動と民進党の同盟関係
3 「毀家・廃婚」から「婚姻平等」へ
3-1 プロテスタント右派と保守の市民連帯
3-2 「毀家・廃婚」から「婚姻平等」へ
4 小括
第6章 韓国Ⅲ――憎悪の動員と差別禁止法の挫折
1 はじめに
2 フェミニズム、ジェンダー主流化、保守回帰
2-1 民主化と女性運動の発展
2-2 ジェンダー主流化と保守回帰
2-3 「女性優先フェミニズム」とトランス嫌悪言説
3 国家人権委員会の挑戦とバックラッシュの台頭
3-1 国家人権委員会と差別禁止法の推進と挫折
3-2 プロテスタント右派の組織化と憎悪の動員
4 小括
第三部 まとめ
終論
1 性/生をめぐる闘争
2 補論――東アジアと複数形のホモナショナリズム
あとがき
謝辞
初出一覧
参考文献
図表一覧
索引
著者
福永 玄弥 (ふくなが げんや)
1983年大阪府生まれ。2005年慶應義塾大学総合政策学部卒業、会社員を経て、2022年に東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程修了。現在、東京大学教養学部附属教養教育高度化機構D&I部門で准教授を務めるほか、都留文科大学で非常勤講師として勤務。専門はフェミニズム・クィア研究、社会学、地域研究(東アジア)。
論考に「男たちの帝国と東アジア」(『エトセトラ vol.10』)、「失敗の留学ノート、あるいは『流氓』をめぐる覚え書き」(『現代思想 2024年11月臨時増刊号』)など。
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