※ 2024年12月下旬 発送予定
産む・産まない・産めないを、国家や医療、他者が管理しようとするこの世界で、「わたしたち」は自身の経験を語る。日本における中絶の歴史を振り返り、当事者の声と、支援者や研究者、取材者などの立場で様々な中絶を見聞きした人たちの声を収録。
◆目次
はじめに[石原燃]
第Ⅰ部 中絶をめぐる長いお話[大橋由香子]
第1章 妊娠したら産むしかない?――堕胎罪と優生保護法
第2章 中絶を禁止する動きと女たちの抵抗――表現と記録
第3章 わたしの身体、わたしが決める――リプロとSRHR
第Ⅱ部 わたしの経験
第1章 自由に産めないのなら、とコンドームを買った[光江]
第2章 目が覚めて、「この世に戻れた」と思った[麻鳥澄江]
第3章 手話通訳はなく、説明がわからない[柴田邦子]
第4章 中絶は自分で自分を生きていくための“点”だった[遠藤知子]
第5章 中期中絶に到った経緯とその後[白銀]
第6章 痛みはまったく感じないという不思議な経験[安藤能子]
第7章 紅茶があったかくて、甘くてほっとした[井上れいこ]
第8章 とにかくお金がまったくなかった[川上真由美]
第9章 性暴力を愛情だと偽らなければ生き延びられなかった[水野恵子]
第10章 自分の体のために中絶と不妊手術をするしかない[S・S]
第11章 もう子どもが産めないのではないかと、ずっと不安だった[ハナコ]
第12章 生理が止まって、本当にビビった[K・R]
第13章 二度の中絶、そのときはその選択しかなかった[チャップ]
第14章 後悔も罪悪感もない[田中青]
第15章 「中絶」という言葉でひとくくりにされるのが辛かった[匿名]
第16章 全身麻酔をしないで中絶手術を受けたい[横山恵]
第17章 産婦人科医のわたしが、中絶なんて[河合亜矢子]
第18章 「水子供養などしてなるものか!」と強く思った[長田真紀子]
第19章 障害がなくても、一人で育てるなど無理だった[K]
第20章 ようやくその日になっても泣かなくなった[遠藤リト]
第21章 罪悪感に押しつぶされそうだった[浦井英子]
第22章 頑張っていたから、学校生活をまっとうしたかった[須藤あゆ]
第23章 南アフリカのクリニックで中絶薬を飲んだ[伴優香子]
第24章 自分の選択が正しかったのか、思い詰めた[太田恵]
第25章 何を言っても誰かが傷つきそうで表現が難しい[春日そら]
第26章 中絶を選ぶ人が悲しむことのない社会に[匿名]
第27章 わたしは何も悪いことはしていない[M・O]
第28章 早すぎて今できることはないと言われた[井川玖美]
対談 経験を語るということ[イ・ラン×石原燃]
第Ⅲ部 様々な経験に接して
第1章 孤立出産[加地紗弥香]
第2章 若年女性と沖縄での中絶[篠原芙由]
第3章 一〇代の妊娠葛藤[中島かおり]
第4章 中絶をめぐる裁判[岩崎眞美子]
第5章 日本における移民女性の中絶[田中雅子]
第6章 優生的な理由での中絶[大橋由香子]
第7章 トランス男性、ノンバイナリー当事者の中絶[吉野靫]
第8章 国際団体による中絶支援――なぜわざわざ海外に[加藤雅枝]
おわりに[大橋由香子]
中絶に関する書籍・作品リスト
◆著者紹介
石原燃(いしはら・ねん)
劇作家。小説家。2010年、『フォルモサ!』が劇団大阪創立40周年戯曲賞大賞を受賞。2011年には短編戯曲『はっさく』がNYのチャリティー企画「震災 SHINSAI:Thester for Japan」で取り上げられた。2020年に自身初の小説『赤い砂を蹴る』が第163回芥川賞候補、2023年に中絶する一夜を描いた戯曲『彼女たちの断片』が第67回岸田國士戯曲賞候補となる。その他、男性の性暴力サバイバーを描いた戯曲『蘇る魚たち』、『彼女たちの断片』の続編ともいえる小説『いくつかの輪郭とその断片』(文學界2023.7月号掲載)など。
大橋由香子(おおはし・ゆかこ)
フリーライター・編集者。著書に『翻訳する女たち中村妙子・深町眞理子・小尾芙佐・松岡享子』(エトセトラブックス)、『満心愛の人』(インパクト出版会)、『生命科学者中村桂子』『同時通訳者鳥飼玖美子』(理論社)、『ニンプ・サンプ・ハハハの日々』(社会評論社)。共編著『福島原発事故と女たち』(梨の木舎)。『千代田区女性史(1996~2020)』(千代田区)の企画委員・編集委員。「SOSHIREN 女のからだから」や「優生手術に対する謝罪を求める会」でSRHRに関する活動もしている。