

李箱文学賞、マン・ブッカー国際賞受賞作家による珠玉の短篇集
痛みがあってこそ回復がある
大切な人の死や自らの病、家族との不和など、痛みを抱え絶望の淵でうずくまる人間が一筋の光を見出し、ふたたび静かに歩みだす姿を描く。
『菜食主義者』でアジア人初のマン・ブッカー国際賞を受賞し、『すべての、白いものたちの』も同賞の最終候補になった韓国の作家ハン・ガン。本書は、作家が32歳から42歳という脂の乗った時期に発表された7篇を収録した、日本では初の短篇集。
「明るくなる前に」:かつて職場の先輩だったウニ姉さんは弟の死をきっかけに放浪の人になる。そんな彼女を案じていた私に3年前、思わぬ病が見つかる。1年ぶりに再会した彼女が、インドで見たというある光景を話してくれたとき、小説家の私の心は揺さぶられる――ウニ姉さんみたいな女性を書きたい、と。
「回復する人間」:あなたの左右の踝の骨の下には穴があいている。お灸で負った火傷が細菌感染を起こしたのだ。そもそもの発端は姉の葬儀で足をくじいたことだった。ずっと疎遠だった姉は1週間前に死んだ。あなたは自分に問いかける。どこで何を間違えたんだろう。2人のうちどちらが冷たい人間だったのか。
大切な人の死や自らの病気、家族との不和など、痛みを抱え絶望の淵でうずくまる人間が一筋の光を見出し、再び静かに歩み出す姿を描く。現代韓国屈指の作家による、魂を震わす7つの物語。
[目次]
明るくなる前に
回復する人間
エウロパ
フンザ
青い石
左手
火とかげ
訳者あとがき
[著者略歴]
ハン・ガン Han Kang 한강
1970年、韓国・光州生まれ。延世大学国文学科卒業。1993年、季刊「文学と社会」に詩を発表し、翌年ソウル新聞の新春文芸に短篇小説「赤い碇」が当選し作家としてデビューする。2005年、三つの中篇小説をまとめた『菜食主義者』で韓国最高峰の文学賞である李箱(イサン)文学賞を受賞、同作で2016年にアジア人初のマン・ブッカー国際賞を受賞する。邦訳作品は同作のほか、『少年が来る』『ギリシャ語の時間』『そっと 静かに』『すべての、白いものたちの』がある。
[訳者略歴]
斎藤真理子(さいとう・まりこ)
翻訳家。主要訳書にパク・ミンギュ『カステラ』(第一回翻訳大賞受賞)『ピンポン』、チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』、チョ・ナムジュほか『ヒョンナムオッパへ』、ハン・ガン『ギリシャ語の時間』『すべての、白いものたちの』がある。