ドラキュラ、アリス、赤ずきん、ファウスト、スーパーマン……古今東西の伝説や文学作品に描かれた登場人物たちをめぐる、『図書館 愛書家の楽園』の著者による最新エッセイ集。
タイトルは「はしがき」の冒頭、『鏡の国のアリス』のユニコーンとアリスの会話に出てくるFabulous Monstersより。著者が子供の頃から心惹かれてきた童話、小説、神話、伝承に登場するモンスター=異形の、もしくは人間離れした、あるいは一筋縄ではいかないキャラクターたちと、その背後に広がる驚くべき文学世界が綴られる。
「人は同じ本を二度読むことはない」とは、時間についてのヘラクレイトスの警句をもじったものだが、作者によって生命を吹き込まれた登場人物たちは、私たちが読み返すたびにページを通して新たな真理を見せてくれる。それぞれのキャラクターが帯びる普遍性に気づかされると同時に、各章で言及される数々の作品も読んでみたくなる。ホールデンではなく妹のフィービー、ハックルベリー・フィンではなく逃亡奴隷のジム、孫悟空ではなく沙悟浄、ハイジではなく祖父に注目するなど、独特の視点も魅力。装画と各章のイラストは著者自身が手がけたもの。
[目次]
はしがき
ムッシュー・ボヴァリー
赤ずきんちゃん
ドラキュラ
アリス
ファウスト博士
ガートルード
スーパーマン
ドン・フアン
リリス
さまよえるユダヤ人
眠れる森の美女
フィービー
性真
逃亡奴隷ジム
キマイラ
ロビンソン・クルーソー
クィークェグ
独裁者バンデラス
シデ・ハメーテ・ベネンヘーリ
ヨブ
カジモド
カソーボン
サタン
ヒッポグリフ
ネモ船長
フランケンシュタインの怪物
沙悟浄
ヨナ
人形のエミリア
ウェンディゴ
ハイジのおじいさん
かしこいエルゼ
のっぽのジョン・シルヴァー
カラギョズとハジワット
エミール
シンドバッド
ウェイクフィールド
謝辞
訳者あとがき
出典
[著者紹介]
アルベルト・マンゲル Alberto Manguel
1948年、アルゼンチンのブエノスアイレスに生まれる。外交官の父の赴任先であるイスラエルのテルアビブで7歳まで過ごし、その後アルゼンチンに帰国。ブエノスアイレス国立高等学校を卒業後、ブエノスアイレス大学を中退、1969年ヨーロッパに旅立つ。フランス、イギリス、イタリア、タヒチと各地を遍歴し、1982年カナダに移住。2016年、ブエノスアイレス国立大学図書館の館長に就任したのを機に生まれ故郷のアルゼンチンに戻り、ニューヨークとの間を行き来する生活を開始。その後、2021年からポルトガルのリスボン在住。
主な著書に『図書館 愛書家の楽園』『奇想の美術館 イメージを読み解く12章』『読書礼讃』(白水社)がある。エッセイや小説、戯曲、翻訳、ラジオドラマへの翻案など多数。1996年にフランス芸術文化勲章シュヴァリエ、2004年にオフィシエ、2014年にはコマンドゥールを受章。メディシス賞(1998年)、ロジェ・カイヨワ賞(2004年)、フォルメントール賞(2017年)、アルフォンソ・レイエス国際賞(2017年)をはじめ、数々の文学賞を受賞。2018年、これまでの業績に対し、ドイツ・マインツ市よりグーテンベルク賞を受賞した。
[訳者略歴] 野中 邦子(のなか・くにこ) 1950年生まれ。多摩美術大学絵画科卒業。主要訳書にR・ヘンライ『アート・スピリット』(国書刊行会)、A・ボーデイン『キッチン・コンフィデンシャル』(土曜社)、A・マンゲル『図書館 愛書家の楽園』『奇想の美術館』『読書礼讃』、H・スパーリング『マティス 知られざる生涯』、E・ウィルソン『ラブ・ゲーム』、F・ジロー、C・レイク『ピカソとの日々』(以上、白水社)、O・ホプキンズ『ザ・ミュージアム』(河出書房新社)、E・ラーソン『万博と殺人鬼』(ハヤカワ文庫)など