欧米のように血みどろの戦争と迫害の中から生み出されたのではなく、いわば上から降ってきた「信教の自由」を、日本人はいかに受け止め、その法規定の解釈・運用や改正をめぐり議論してきたのか。宗教者・知識人らの論争から、その底流にある「信教の自由」をめぐる思想の変転を跡づける。さらに、オウム真理教事件を契機とする宗教法人法改正にあたって論議となった創価学会と政治との関係、安倍晋三元首相銃撃事件後の旧統一教会の被害者救済などの政策動向などを踏まえて、今後の「信教の自由」のあるべき姿について提言する。
目次
序 章 「信教の自由」のこれまで・今・これから
第一章 西洋宗教との出会い――島地黙雷らとロニーの対話から
第二章 仏教のみを「公認教」とすべきか――第一次宗教法案をめぐる論争
第三章 政府の監督権をどこまで認めるか――第二次宗教法案と知識人・宗教者たち
第四章 「信教の自由」は言論・集会・結社の自由を含むか――第一次宗教団体法案と憲法論議
第五章 「非常時」における宗教統制をめぐって――第二次宗教団体法案と翼賛体制の構築
第六章 自由・自治・自主の実現に向けて――宗教法人令・宗教法人法への転換
第七章 オウム真理教と創価学会をめぐる攻防――宗教法人法改正の是非
終 章 「信教の自由」のために――旧統一教会問題と第三者機関設置・民主的統制
参考文献
あとがき
人名索引
著者
小川原 正道(おがわら・まさみち):1976年生まれ。慶應義塾大学法学部教授。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(法学)。専門は日本政治思想史。著書に『福沢諭吉――「官」との闘い』(文藝春秋)、『福沢諭吉の政治思想』(慶應義塾大学出版会)、『小泉信三――天皇の師として、自由主義者として』(中公新書)、『福沢諭吉 変貌する肖像』(ちくま新書)、『日本政教関係史』(筑摩選書)など。
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