共有地にはかならず他者がいる。
「共有地だ」と思う場所では、その他者とわたしはつながることよりも、つながらないことのほうが多かった。
だれかの個人的な営みや行動、だれかの思いや試行錯誤、だれかののこり香――ここにいる/いただれかが、たたずみ、見わたす気配だけがあって、ここは、わたしもいる場所である、あなたもいる場所である、という空間だけがある。
「だれか」同士のまま、ひとりでたたずみ、見まわす、――やすらぎ、くつろいだとき、軌跡と、場、そのものが、「わたしたち」である場所を、共有地と、わたしは呼ぶのかもしれない。
まち、書店、本(をつくること)、居場所と名乗り開かれた場所、五つの『共有地』で営む存在たちのエッセイ5編収録。
執筆者
井上彼方(VGプラス)
小泉初恵(水俣・相思社)
佐藤創(鳥羽・なかまち)
関口竜平(本屋lighthouse)
大東悠二(HIBIUTA AND COMPANY)
編集・井上梓
小エッセイ・孤伏澤つたゐ
目次
はじめに
関口竜平 適当な空間 得体の知れない大人
井上彼方 それでもその先を夢見て
小泉初恵 水俣、メガネ、天然魚
佐藤創 鳥羽・なかまちに住んで
孤伏澤つたゐ まちのいちぶのヘンテコリン
大東悠二 わかち合う時を求めて、わたしたちの共有地をつくる。
著者略歴
井上彼方【著】
SF企業VGプラス合同会社代表。オンラインSF誌 Kaguya Planetのコーディネーター、SFレーベルKaguya Booksの編集者。編書『新月/朧木果樹園の軌跡』『京都SFアンソロジーここに浮かぶ景色』(社会評論社)、共同編集『結晶するプリズム 翻訳クィアSFアンソロジー』など
小泉初恵【著】
一九九一年兵庫県神戸市生まれ。自由学園卒業。立命館アジア太平洋大学卒業。二〇一五年から一般財団法人 水俣病センター相思社 職員。現在は展示・資料担当。二〇二三年から 一般社団法人 水俣・写真家の眼 事務局。
佐藤創【著】
一九八八年生まれ。東京都あきる野市出身。大学で映像制作を学び、卒業後テレビ番組制作会社等で働く。二〇一七年、鳥羽市に地域おこし協力隊として移住。鳥羽なかまち会代表。
関口竜平【著】
一九九三年二月二六日生まれ。法政大学文学部英文学科、同大学院人文科学研究科英文学専攻(修士課程)修了ののち、本屋lighthouseを立ち上げる。著書『ユートピアとしての本屋 暗闇のなかの確かな場所』(大月書店)。将来の夢は首位打者(草野球)。特技は二度寝。
大東悠二【著】
一九八六年生まれ。三重県伊勢市出身。高校卒業後、障害福祉サービスに十年従事したのち、二〇一五年に合同会社おうばいとうり設立。三重県津市久居で生きにくさを抱えた人の居場所(ひびうた)と、違いのある人が共に過ごせる共有地(HIBIUTA AND COMPANY)をつくっている。
孤伏澤 つたゐ【著】
二〇二三年九月日々詩編集室から『ゆけ、この広い広い大通りを』刊行。代表作は『幻想生物保護官日記』『浜辺の村でだれかと暮らせば』(いずれもヨモツヘグイニナ刊行)。澁澤龍彥が好き。
井上梓【編集】
日々詩編集室室長
やまぎわさゆり【イラスト】
三重県在住の絵描き。6年前にオリジナルキャラクター「もじもじねずみ」が誕生し、絵を描く活動の傍ら、2021年にシルクスクリーンで遊べるアトリエ『旅するアトリエmojimoji』をオープンしました。