何度でも覚え直せばいいし、何度でも忘れていい。街をめぐる断片的な随筆21篇を収録。作家の小山田浩子も推薦、待望のデビュー作。
“いつまででも読んでいられるしどこまででも歩いていけると思った。ずれて輝く記憶と世界、軽妙さと誠実さ、私はオルタナ旧市街を信頼する。”
――芥川賞作家・小山田浩子さん、推薦。
【内容】
巣鴨で踊る老婆、銀座の魔法のステッキ男、流通センターのゆで太郎から始まる妄想、横浜中華街での怪異、不穏な水戸出張……街をめぐる断片的な21篇。
わたしたちは瑣末なことから日々忘れて暮らしている。忘れないと暮らしていけないとも思う。わたしとあなたの断片をみっともなく増やしていこう。何度でも覚え直せばいいし、何度でも忘れていい。
インディーズシーンで注目を集める謎多き匿名作家・オルタナ旧市街が、空想と現実を行き来しながら編み出した待望のデビュー・エッセイ集。
“誰の記憶にも残らなければ、書き残されることもない。それはそれで自然なのかもしれないけれど、身の回りに起こったことの、より瑣末なほうを選び取って記録しておく行為は、未来に対するちょっとしたプレゼントのようなものだと思う。”(表題作「踊る幽霊」より)
誰にでも思いあたる(いや、もしかしたらそれはあなたのものだったのかもしれない)この記憶のスクラップ帳は、書かれるべき特異な出来事も起きなければ、特殊な事情を抱えた個人でもない「凡庸」な人々にこそ開かれている。
【著者略歴】
オルタナ旧市街〈おるたなきゅうしがい〉
個人で営む架空の文芸クラブ。2019年より、ネットプリントや文学フリマを中心に創作活動を行う。2022年に自主制作本『一般』と『往還』を発表。空想と現実を行き来しながら、ささいな記憶の断片を書き残すことを志向している。文芸誌『代わりに読む人』、『小説すばる』、『文學界』などにも寄稿。
目次
踊る幽霊[巣鴨]
されども廻る[品川]
反芻とダイアローグ[水戸]
スクラップ・スプリング[御茶ノ水]
午前8時のまぼろし[駒込]
老犬とケーキ[東陽町]
タチヒの女[立川]
麺がゆでられる永遠[流通センター]
アフターサービス[横浜]
大観覧車の夜に[お台場]
ウィンドウショッピングにはうってつけの[五反田]
おひとりさま探偵クラブ[銀座]
白昼夢のぱらいそ[箱根]
聖餐[吉祥寺]
愛はどこへもいかない[小岩]
猫の額でサーカス[浅草]
がらんどう[南千住]
さよなら地下迷宮[馬喰町]
(not) lost in translation[渋谷]
見えざる眼[秋葉原]
テールランプの複製[八重洲]