1948年のイスラエル建国以来、イスラエルとパレスチナの間には紛争が絶えない。一方で90年代初頭から両者は二国家解決を目指してなんども和平交渉を試み、失敗をくり返してきた。しかしその交渉は2014年4月を最後に途絶える。以来、国際社会はこの問題への関心を急速に失い、イスラエルとアラブ諸国の接近はパレスチナを置き去りにするかに見えた。この状況は2023年10月7日、ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃で一変した。
イスラエルとパレスチナの歴史を振り返れば、暴力は問題を少しも解決しなかった。和平交渉も膠着を打開できなかった点では同じだ。しかし、お互いが聖地とする限られた土地に隣人として生きるイスラエルとパレスチナには、武力による決着ではなく、なんらかの共生しか道はない。
本書はイスラエルとパレスチナの和平交渉について、その30年にわたる経過を客観的かつ丹念に跡づける。和平を目指して無数の文書や合意が交わされながら、それはいつも類似のパターンで潰えてきた。それはなぜなのか? 交渉の機微を読むことは、この問題を理解することに他ならない。それは解決への道筋を考える上で欠かせないプロセスとなるだろう。
目次
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はじめに
序章 現況と歴史のあらまし
1 直近の基礎データ
2 過去の経緯
第1章 ジョー・バイデン政権(2021年1月以降)
1 壁の守護者作戦
2 イスラエルの政治情勢
3 パレスチナの政治情勢
第2章 ジョージ・H・W・ブッシュ政権(1989年1月~93年1月)
1 湾岸危機
2 マドリード中東和平会議とその後
第3章 ビル・クリントン政権(1993年1月~2001年1月)
1 オスロ交渉
2 オスロ合意
3 第一次ネタニヤフ政権
4 バラク政権
5 最終的地位交渉
6 第二次インティファーダ
第4章 ジョージ・W・ブッシュ政権(2001年1月~09年1月)
1 タバ交渉
2 米国同時多発テロ
3 防衛の楯作戦
4 新しい和平提案
5 パレスチナの新体制
6 分離計画──西岸分離壁とガザ撤退
7 西岸とガザの分裂
第5章 バラク・オバマ政権(2009年1月~17年1月)
1 第一期オバマ政権──ジョージ・ミッチェルによる仲介
2 パレスチナの国連加盟問題
3 第二期オバマ政権──ジョン・ケリーによる仲介
4 イスラエル・パレスチナの関係断絶
5 アラブの春とその余波
第6章 ドナルド・トランプ政権(2017年1月~21年1月)
1 政権の始動
2 エルサレムの首都認定
3 パレスチナ支援
4 世紀のディール
5 イスラエル・アラブ諸国の国交正常化
6 パレスチナの内部情勢
第7章 入植地、アウトポスト問題
1 ネタニヤフ政権の政策
2 極右政権の発足
終章 二国家解決策
おわりに
[附録]入植地とアウトポストの概観
あとがき
略語一覧
注
索引
著者
阿部俊哉
あべ・としや
1968年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科国際政治学専攻修了。1993年国際協力事業団(現 国際協力機構)(JICA)入社後、企画部パレスチナ担当を経て、1998年にパレスチナ事務所の立ち上げに関わり、3年間赴任。2007年に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)本部に出向し、上級開発担当官として人道と開発の連携を担当。2019年1月から2023年2月までJICAパレスチナ事務所長を務めた。現在はJICA評価部部長。東京大学先端科学技術研究センター客員研究員。著書『パレスチナ――紛争と最終的地位問題の歴史』(ミネルヴァ書房、2004年)。
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