

西洋フェミニズムの「普遍的正義」の裏に、異なる文化への差別意識がひそんではいないか。
女性であり、かつ植民地主義の加害者の側に位置することを引き受け、
「他者」を一方的に語ることの暴力性を凝視しながら、
ことばと名前を奪われた人びとに応答する道をさぐる文化の政治学。
〔目次〕
序章 彼女の「正しい」名前とは何か
序章付記 他者の「名」を呼ぶ、ということ
I 「第三世界フェミニズム」とは何か
「第三世界」と「西洋フェミニズム」
カヴァリング・ウーマン、あるいは女性報道
「女性割札」という陥穽、あるいはフライデイの口
第1部付記 文化という抵抗、あるいは抵抗という文化
II 発話の位置の政治学
「文化」をどこから語るか
「グローバル・フェミニズム」の無知
置き換えられた女たち
第II部付記 ポジショナリティ
III 責任=応答可能性(レスポンシビリティ)
蟹の虚ろなまなざし、あるいはフライデイの旋回
Becoming a Witness
転がるカボチャ、あるいは応答するということ
第III部付記 〈出来事〉の共振
終章 「他者」の存在を想い出すこと
あとがき/新装版のあとがきに代えて/引用文献
著者
岡真理(おか・まり)
1960年生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科教授。専門は現代アラブ文学、パレスチナ問題、第三世界フェミニズム思想。
著者に『記憶/物語』(岩波書店)、『棗椰子の木陰で』(青土社)、『アラブ、祈りとしての文学』、『ガザに地下鉄が走る日』(みすず書房)ほか。
訳書にエドワード・サイード『イスラム報道 増補版』(共訳、みすず書房)、サラ・ホイ『ホロコーストからガザへ』、
サイード・アブデルワーヘド『ガザ通信』(共訳、青土社)、ターハル・ベン=ジェルーン『火によって』(以文社)、
アーデイラ・ライディ『シャヒード、100の命』(インパクト出版会)ほか。
2009年から平和を目指す朗読集団「国境なき朗読者たち」を主宰し、ガザをテーマとする朗読劇の上演活動を続ける。